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#90 リユース~捨てるという概念すらをも無くす、真のサステイナビリティ

Jan 13, 2022

Author

Risa Isobe
Researcher @Tokyo

昔は瓶に入った牛乳が定期的に家に届けられ、飲み終わった瓶が回収され、洗浄して綺麗になった瓶に新しく詰められた牛乳瓶がまた届く、といった風景が日常の一部でした。しかし、次第に利便性を求め、身の回りの生活用品・食品容器などがあっという間にプラスチック包装に置き換わり、今となっては大量のプラスチックが生産された結果、プラスチック由来の環境問題が深刻化している状況です。

この問題の解決策として、プラスチックリサイクルや生分解性プラスチック製造など新しい技術も出てきていますが、ある意味数十年前の時代に戻るような「再利用」の仕組みを構築する動きが、最近注目を集めています。

ごみ削減や環境保護、そして循環型社会への取り組みとして5Rという言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。5RはReduce(減らす)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)、Refuse(断る)、Repair(修理)というRで始まる5つの行動を意味しています。実際、そもそもの大量生産大量消費を見直し、捨てるという概念を捨て、リサイクルする必要すらも無くして再利用を促進することこそ、真の意味でサステイナブルといえるのではないでしょうか。今回は5Rの中でも再利用(リユース)に特化した興味深い企業をいくつかご紹介します。

プラスチック消費のうち、最も利用されているのは包装品 / photo credit: CNN


1. LOOP

Loopは、世界20カ国以上でリサイクル事業を手がける米TerraCycleテラサイクルによって開発されたプラットフォームである。生活用品メーカー、小売業者、物流会社等と提携して最適なオペレーション・ロジスティクスを構築している。具体的には、ガラスやステンレス製の再利用可能な容器ボトルを用いてECや小売店で販売し、使用後にLoopが容器ボトルを回収・洗浄し、メーカーは返却された容器に再び中身を詰めて出荷・再販売するという仕組みだ。

容器ボトルについてはTerraCycleテラサイクルがガイドラインを定め、「耐久性」「洗浄のしやすさ」「LCA(Life Cycle Assessment)」という3つの基準のもとメーカーが容器を開発。Loopはあくまでもロジスティクスに特化。なるべく消費者に負担がないよう、回収の方法もシンプルに構築されていて、EC注文であれば専用バッグに入れて宅配業者を呼ぶだけ、店舗購入であれば買い物のついでに回収ボックスに返却するだけで済む。既にアメリカ、カナダ、フランス、イギリス等に展開しており、日本にも進出している。

Loopの仕組み

「デザイン性の高いパッケージ」や「機能性・利便性」が特徴で、環境配慮への意識がそれほど高くない人でもLoopを使い始める良い動機となっている / photo credit: TerraCycle

2. Algramo

チリのサンティアゴで設立された同社は、もともと製品コストの30%と推定されるパッケージのコストを取り除き、詰め替えだけを販売して安価にすることで、容器削減と貧困層の経済的支援を両立させるという目的で始まった。洗剤やシャンプーなどの既存製品のラベルを変更し、ICタグを付けて、消費者がディスペンサーで簡単にボトルを補充できるようにするという仕組みだ。また、容器のRFタグにリンクされた登録口座から、購入した分量に合わせて引き落とされる支払い方法になっている。

当初はディスペンサーを搭載した小型車両を使って事業を展開していたが、最終的には小売業との連携の方が成功した。現在Unilever、Nestlé、世界的日用品メーカーColgate-Palmolive、Walmart Chileと提携し、大手ブランドと大手小売企業を結びつけることに成功している。その結果チリ全土にステーションがあり、約5万人のユーザーが詰め替えの商品を購入。ジャカルタ、ニューヨーク、メキシコ、ロンドンでもプロジェクトが進行中。

消費者が自分で再利用の容器を洗浄し、店舗に持参して補充するといったオペレーションは、他のソリューションに比べると消費者の負担は大きいものの、全体のロジスティクスにかかる炭素排出量を考えると、環境負荷が最も低いソリューションの一つとして世界中で拡大が期待される。

小売店舗に設置されているディスペンサーの様子 / photo credit: TechCrunch

3. Zero Co

オーストラリアで2019年に設立した同社は、消費者に容器と詰め替え用パウチを届け、空になったパウチを返送用封筒で送り返してもらい、会社はそのパウチに洗剤を入れ直して再販売するという仕組みを構築している。容器本体は海、ビーチ、埋め立て地から引き出したプラスチックのゴミから作られており、中身の洗剤なども化学物質を使っていないエコな素材で出来ている。このように、同社はロジスティクスだけでなく容器・中身の製造をも手掛け、最初から最後まで完全にエコを追求している点が特徴である。

ローンチからたった10カ月でオーストラリアの4万世帯が登録し、今年10月に実施したクラウドファンディングではオーストラリア市場最大の記録を破り、6時間で500万ドルの調達に成功するなど、話題を集めている。ちなみに、ボトルの裏にあるコードをウェブサイトで検索すると、自分が使っている容器は、元々どの海に打ち寄せられたゴミだったのか確認できるユニークな機能も付いている。

洗剤、ボディソープ、ハンドソープ、トイレクリーナーや芳香剤、スプレーといった様々な生活用品を手掛け、デザイン性にも定評がある

4. Pyxo

上記3つの企業は生活用品を対象とした再利用サービスだったが、レストラン・デリバリー業界でも再利用の動きはもちろん活発で、様々な企業が出てきている。そのうちの一社が、パリで2018年に設立されたPyxoだ。同社はレストランと連携し、食品容器や包装を回収・洗浄・消毒するインフラを構築し、業界のあらゆる企業をつなぐことで、必ずしも注文したレストランでなくても最寄りの回収場所に返却可能としている。今後はゲーミフィケーションや少額のデポジット制を導入することで、さらに消費者の返却インセンティブを高めることを考えている。

このようなサービスが拡大している背景の一つが規制変更であり、2020年7月にフランスの議会が廃棄物対策法を変更したことで、レストランは2023年1月までにすべて再利用可能な食品容器に切り替えなくてはいけなくなったことが挙げられる。

容器自体もエコで、BPAフリーで食洗器に10年耐用、最終的にはリサイクル可能な容器を製造 / photo credit: TechCrunch

以下、EISの考察です

  • 生活用品や食品容器だけに限らず、再利用可能かどうかという観点から自社製品を再認識することは、真のサステイナビリティ実現において重要である
  • グローバルで進んでいるプラスチック容器への更なる規制強化に伴って、様々な業界が画期的ソリューションを模索しているため、大きなビジネスチャンスである
  • 再利用のみならず、自社の商品やサービスがどの5Rの行動を起点に、消費者を巻き込んだ環境保護推進やサーキュラーエコノミーへの貢献ができるか、企業として熟考する必要がある

参考文献

  1. CNN
  2. GreenBiz
  3. TechCrunch - Algramo
  4. TechCrunch - Pyxo


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