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ECDラボ

XRが作り出す新たな顧客体験の世界

April 18, 2021

消費者が店舗での体験よりも利便性を選び、オンラインでの滞在時間が長くなるにつれ、先進的なブランドはショッピングの場を仮想化するXR(エクステンデッド·リアリティ:拡張現実、仮想現実、複合現実を含む幅広いカテゴリーの技術)の可能性を意識し始めました。そこに昨年COVID-19が大流行したことにより、世界中の小売業者がオンラインショッピングへのシフトチェンジを余儀なくされたため、XRをいち早く取り入れたブランドにとっては他社との差別化を図るための強力なツールとなりました。Shopifyは最近、同社のプラットフォーム上で「3D/ARコンテンツを持つ製品は、3D/ARを持たない製品に比べて94%高いコンバージョン率を示した」と報告しています。コロナ禍の今はこの新しい技術を採用する絶好の機会といえるのではないでしょうか。

そこで今回は、心に残るブランド体験を生み出すために、企業がすでにXRをマーケティングに活用している2つのイノベーティブな事例をご紹介します。

1. 楽しくてイマーシブなバーチャル旅行

パンデミックの結果、世界中の人々が家に閉じこもってしまいました。小売店どころか、どこにも行くことができなかったのです。いくつかの企業は、このような状況下でもお客さまに楽しんでいただけるよう、バーチャルな旅を提供して、孤立感を取り除き、ブランドとのエモーショナルなコネクションを結ぶことに成功しました。

TOMSのGiving TripsはVRを通じて寄付活動を擬似体験できる

1足の靴を購入するごとに発展途上国の子供たちに新しい靴が一足贈られるという活動で知られるシューズブランドTOMSは、Vrseと提携して、TOMSが実施している「Giving Trips」という靴を直接子供たちの元に届ける旅にバーチャルに参加できるVR体験を制作しました。このVR体験によってTOMSの顧客は、ブランドが行なっている社会貢献に実際に同行しているような擬似体験をすることができます。

イタリアの高級ブランド、ブルガリは「Glacial Essence 」という名の新しいメンズフレグランスを発表するにあたり、ユニークなアプローチを取りました。ゲーム化された発売記念イベントに参加したOculusユーザーは、VRヘッドセットを装着してマッターホルンに登り、バーチャルの斧で氷の塊を割って新しいコロンを「発見」することで魅惑の香りを体験しました。

オンライン上で旅行気分を楽しめる上に、買い物もできるバーチャルツアー

2020年9月のパンデミックの最中、アマゾンはアメリカの消費者向けに「Amazon Explore」というバーチャルツアーと体験のプラットフォームを立ち上げました。この新サービスでは、アルゼンチンでのバーチャルワインテイスティング体験、メキシコでの燻製タコスの作り方の学習、京都の南禅寺のバーチャルツアー、コスタリカでのコーヒー作りの学習など、現地の専門家が案内するライブでのバーチャル体験を予約することができます。ショッピングにも対応している体験では、消費者は地元の店舗や市場を「訪問」し、実際にその場にいるかのように商品を見たり、店主に質問したりすることができます。そして、XRのインターフェースを通じて購入を選択すると、あたかもAmazon.comで直接買い物をしたかのように、購入した商品を受け取ることができるのです。

2. 商品の紹介、販売の促進、返品の削減を高い費用対効果で可能にする、

バーチャル に"試してから買う "体験

AR(=拡張現実)は、買い物客がバーチャルの商品を現実世界で視覚化することを可能にするもので、仮想現実マーケティングの中でも最も一般的なものです。多くの企業にとって、ヘッドセットを使った体験を制作するよりも実現性が高く、コストも抑えられます。ARはスマホやデスクトップのアプリだけで利用できるため、消費者にとってもより身近な存在と言えます。ARマーケティングを採用するブランドでは、消費者は、商品を購入する前にバーチャルで試すことができます。商品の全体像を見ることができるので、返品の可能性が低くなるのです。eコマースにおける返品の64%は商品が消費者の期待に応えられなかったことが原因。返品が減ればコストが削減され、収益増加につながります。

化粧品会社のSephoraは、Virtual Artistアプリで拡張現実マーケティングをいち早く導入しました。このアプリを使うと、消費者は自分の顔でさまざまなメイクアップを試すことができ、パーソナライズされた商品提案を受けることができます。パンデミック中、多くの小売店では、消費者が実際に化粧品を肌につけて試すことを禁止していたため、このアプリがSephoraにとって重要な差別化要因となりました。

小売業者も拡張現実技術を利用して、バーチャルな店舗でのデジタルショッピング体験を再構築し始めています。2020年5月、デパートのKohl'sは、Snapchatと共同で「Kohl's AR Virtual Closet」を開発しました。消費者はスマートフォンの「Snapchat」アプリでARの試着室に入り、アイテムを組み合わせて、アプリから商品を購入できます。

ここで紹介した例は、企業がカスタマー・ディスカバリーのプロセスでXRを活用し、消費者を惹きつけ、魅了し、結びつけているクリエイティブな方法のほんの一部に過ぎません。XRを活用して魅力的なバーチャル体験を生み出すことができるブランドは、競合他社を凌ぐ立場を得られると言えます。この機会に、御社の顧客発見プロセスにXR戦略をどのように活用できるかを検討し、利益の増加と高いブランドロイヤリティの構築に役立てることを強くお勧めします。

 

ECDアカデミーでは、御社がアメリカの消費者に支持される仕組みづくりをサポートするために、具体的な企業のケーススタディや様々なソリューションを含めて、顧客ディスカバリープロセスを評価・改善するためのプログラムをご用意しています。本プログラムにご興味をお持ちの方は、カリキュラムの詳細などをこちらからお問い合わせください。

参照記事

  1. Harvard Business Review
  2. National Retail Federation
  3. SXSW2021 - “The Rise of Volumetric Video in PR andMarketing”
  4. Photo credit: National Retail Federation, Toms, Bvlgari, Amazon, Sephora, Kohl’s
  5. Photo
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